ハンドルネームのこと

Ｃａｒｉｎａというのは星座の名前です。和名を「りゅうこつ座」といいます。
元々はアルゴ座という、ギリシャ神話に登場する快速船をかたどった星座でした。
アルゴ船は竪琴の名人オルフェウス、怪力の英雄ヘラクレス、双子の兄弟カストルと
ポルックスなど、神話に登場するたくさんの人々を乗せました。また中東では
ノアの箱舟に見たてられたそうです。
プトレマイオスの48星座の中にすでに含まれていた、古く由緒ある星座でしたが、
東西に75度、南北に60度も広がる、あまりにも巨大な星座であったために、
近世になって、ラカーユにより、「りゅうこつ座」「とも座」「らしんばん座」「ほ座」
（竜骨、船尾、羅針盤、帆）に４分割されてしまいました。

りゅうこつ座はアルゴ船の骨格の部分を表す星座で、冬の大三角形から
南へ下がる天の川ぞいにあります。
シリウスに次いで全天で２番目に明るく輝く星、カノープスと、
全天一の規模を誇る大散光星雲、エータカリーナ星雲、
そして、とも座の星２つと共につくる、ニセ十字(南十字星とよくまちがえられる）を
持っています。
カノープスは「南極老人星」とも言われ、この星を見ると長生きするとも言われています。

なぜ、私がＣａｒｉｎａを名乗るのかといいますと、私のたった一度きりの海外旅行、それは
オーストラリアへの新婚旅行でした。どうしてもエアーズロックが見たかったのです。
そして星を見るのが大好きな私は南天の星を見たかったのです。
願いはかなえられ、エアーズロック観光の拠点となるホテルから夜中に
主人と抜け出して、本当は夜間は入ってはならない公園内に夜の闇を求めて入り、
大小のマゼラン雲、南十字とニセ十字、エータカリーナ星雲、コールサック、
たくさんの南の銀河の星々を目に焼き付けました。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の舞台となった天の川は本当にすばらしかったです。
１０年たったらまたここに来よう、そう主人と約束しました。

その主人は一昨年、スキルス型の進行胃癌を宣告されました。
亡くなったアナウンサー、逸見政孝さんと同じ病気です。
その年に大きな手術をしていますが、現在も闘病中であり、
１０年たったら・・・今年がその１０年目になりますが、約束は叶えられそうにありません。
でも完治を諦めてはいないんですよ。主人も頑張っています。
私も家族の生活を支えるために頑張って働いています。
そしていつか、また主人と子供達、みんなで、空の青と大地の赤が印象的な
あの地を再び訪れて、宝石をちりばめたような星空を眺めたい・・・。
Ｃａｒｉｎａという名前には幸せだった時の南天の星空の思い出と、
いろいろな願いがつまっているのです。それがハンドルネームの由来です。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(2000.7.7 記）

おかげさまで主人は昨年、無事に手術後５年目を迎えることができました。
因みに手術は胃・十二指腸・胆嚢・脾臓全摘及び膵尾部合併切除、３群までの
リンパ節郭清で、市内の病院では手術対応できずに隣市の大学病院へ
紹介されました。術後肺炎を起こし、一時は危なかったのですが持ちなおし、
約１ヶ月で退院。その後しばらくは抗がん剤も内服していましたが、途中でそれは
中止し、メガビタミン療法を始めとして、まいたけの毎日摂取や、冬虫夏草、アガリクス、
キトサン、柿の葉温熱療法、クラッシック音楽療法や落語による笑い療法等、
体に良いとかガンに効くといわれる民間療法をいろいろ試しました。
ダンピング症候群や下痢他の後遺症で未だに辛い時もありますし、術前に比べて
体重が約20kgも減ってしまい体力がなかなか戻らないことなど、不便もありますが、
漿膜に達していたスキルスの予後としては経過はすこぶる順調と言えると思います。

病状のこともありますが、精神的なことや経済的なことでも大変だった５年でした。
後遺症が強く出て休みがちだった主人は営業成績が悪いからとリストラされたり、
再就職できても給与条件が悪かったり。でも今はなんとか仕事にも頑張っています。
相変わらず、私が家のローンと医療費以外の生活費の殆どを稼がなくては生活して
いけないのですが、主人が頑張っている姿は私にとっても励みになります。
さらに、このサイトを立ち上げて知り合えた方達からの励ましとアドバイスも、
私には強い支えとなりました。本当にありがとうございました。

そうして思うに、何事も『諦めちゃダメなんだ』と。
26年ぶりの劇場版上映の時も思いましたが、たとえ望みが薄くても、可能性が
少しでも残っている限りは諦めてはいけないと。
5年が経ち、さらにもうあと3ヶ月で6年を迎えようという今、強く思います。

付記として、書こうか書くまいか迷いましたが、新八犬伝を見ていた世代であれば、
もしかすると同じようにガンと闘病されている方達もいらっしゃるかもしれません。
稚拙な文章でどうかと思いますが、すこしでも希望を持っていただけたなら、と
思い、加えさせていただきました。

もう一つ、ハンドルネームに絡んでお話を。
Carina=りゅうこつ座にちなんだギリシア神話にアルゴ号のお話があります。
イオルコス国の王子イアソンと、コルキス王アイエオスの娘メディアの愛憎話で、
「王女メディア」として何度も映画や舞台の題材に取り上げられており、
蜷川幸雄氏の演出作品では、辻村寿三郎（ジュサブロー）氏が衣裳や
アートディレクターを担当されています。・・・ただ、それだけのことなんですが、
神話の本を読んで、こんなところにも御縁があったのか、とちょっと驚いたのでした。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(2004.7.7 記）